ベテラン女優A(演技歴10年)とアクティングコーチ田中てつとの往復書簡「役になりきりたいですか?だったら役の目的は考えてはいけません!」

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ベテラン女優Aとの往復書簡を24週分公開!

なぜ、演技教材「みん☆スタ」はベテランにこそ喜ばれたのか? 

 「みんなの演技力を劇的に向上させるスタニスラフスキーシステムの本当の使い方オンラインコース」(※略して「みん☆スタ」)を昨年12月にリリースして一年が経とうとしている。

その軽薄なネーミングから一見すると演技初心者向けの教材と思われがちだが、実は演技歴10年を超えるベテラン俳優さん達からこそ多くの喜びの声を頂くこととなった。

 

顕著なのは

  • 「これまでの学びや経験がやっと1つにつながりました!」
  • 「今までのワークショップでは謎だったことが明らかになり全ての学びが無駄で無かったと分かり本当に嬉しいです!」
  • 「また、演技が好きになってきました」

という趣旨が多い事。

 

つまり、熱心に本物の演技を求め最新のテクニックを学んできたが故に、かえって混乱していたり、演技を楽しめなくなってしまった俳優さんが、その混乱から解放されたという声が多いのだ。

 

「みん☆スタ」は演技未経験者にはもちろん、経験を経たこだわりあるベテラン俳優にも伝わるよう基礎の基礎からリアリズム演技を解き明かした。

 

  • 演技とはそもそも何か?
  • 演技とは何ができる技術なのか?
  • 観客はドラマに何を求めているのか?

 

これらは演技を学ぶ上で絶対に押さえておかなければならない重要な話だ。

しかし、かく言う私も、通常の一斉レッスンではなかなか出来ないでいた。メンバーが増える度に同じ話を何度も聞かなければならない俳優がでてくるからだ。だが動画だからこそ私の実演も交えつつリアリズム演技の原理原則を具体的に丁寧にお見せすることが可能になった。

 

これらのリアリズム演技の原理原則を聞いたことさえない俳優達がいきなりテクニックや訓練方法を教わったために混乱していたということなのだろう。「みん☆スタ」の中でももっとも反響が多いのがこの最初の週の座学なのだ。

 

「みん☆スタ」は半年でスタニスラフスキー・システムの神髄を学ぶオンラインコースです。詳しくは画像をクリックしてください! 

 

日本にリアリズム演技メソッドが浸透しない理由とは?

 

10年ほど前頃よりリアリズム演技の方法論各種がこぞって日本で流行りだしその知識やノウハウが一気に広まった。マイズナーテクニックを教える養成所が増え、5,6年前にはチャバックの書籍も出版された。やっと実用的な演技術が日本にも上陸しだしたとの期待が高まった。

 

それまでの日本では、メソード演技やスタニスラフスキー・システムはどこか近寄りがたい怪しさを含んでおり、書籍を読んでも具体的に何をどうすれば良いのか、多くの俳優にとっては謎のままだった。

 

一部の劇団はそれらの目指すリアリズムを読み誤り、やや狂信的に誤用し「芝居におけるリアリティーの追求」と「単なる現実」とを区別しないどこか狂った演技を追い求めていた。

「本当の自分の解放」や「真のリラクゼーション」など、まるで怪しい自己啓発セミナーのような演技を「これこそリアリズム演技」と標榜した。

結果、それを見た多くの俳優がアンチ・メソード演技やアンチ・スタシスに傾いたのも無理は無かったがそんな悲しい歴史も遠い昔になるだろうと思われた。

 

 しかし、この10年でそれら目新しいリアリズム演技テクニックを使いこなせるようになるどころか、増えた知識や繰り返した訓練によってかえって混乱してしまった俳優も大勢いた。

原因の一つはそれらのテクニックを教えている講師達自身が十分にそれらのメニューの意味や価値を消化しきれていないままに指導してきたことかと推察する。

 

彼らはそのテクニックや訓練メニューを教えることはできても、いざ実践において、それをいつ?どのように活かすのか?までは知らないようだった。用法や容量を守らなければならない劇薬的な手法を誤って使い、俳優から演技への楽しみや希望を奪ってしまった輩もいた。

 

実際、私のワークショップや「みん☆スタ」には「演技がつまらなくなりました」「せっかく熱心に学びましたが、使いこなせません。というよりも、習ったテクニックを使う事に疑問さえあるのです」と打ち明けてくれる俳優が大勢いた。

 

実際、私の生徒にはそこそこ有名な俳優養成所の演技講師達もいるのだが、彼らもまた自分が教わり、今では教える側には回ったものの完全な理解や納得のできていない部分を解消しきれなくて私の元を訪れていた。中には自分の教えていた事に疑問を抱き演技教師を辞めたと告白してくれた方もいる。 

 

野球のルールを知らないまま肉体改造に励んで試合に勝利できるか?

 

結局、マイズナーテクニックにしろ、チャバックにしろステラアドラーにしろ、スタニスラフスキー・システムからのスピンオフだ。リアリズム演技の原則に従いながらもある特定の症状について対処するためにカスタマイズされたものと言える。つまり、欧米ではスタニスラフスキー・システムが常識として既に共有されているからこそ、それぞれのテクニックは機能している。

 

舞台にしろ、カメラ前にしろ、役を生きるためには、ドラマという場を支配しているある原理原則に従う必要がある。その場の全てを支配しているルールがあるのだ。そのルールを知らずに個別のテクニックを磨いてもどう活用すれば良いのか分からないのは当然だろう。

 

例えるならば、野球のルールを知らないままホームランを打つために特化した訓練やテクニックばかりを磨いた選手がいるとしよう。

その選手は努力の甲斐あってホームラン打率が上がったかもしれない。

しかし、野球というゲームが相手チームよりたった1点さえ上回れば勝てる事を知らなければどうだろう?

9回で終了する事も、3アウトでチェンジすることも知らなければ、同点で迎えた9回裏、ツーアウト、満塁、スリーボール、ノーストライクの場面でホームランを狙ってフルスイングするのがいかにバカげているかに気づかないかもしれない。

あるいは、せっかくヒット性の当たりだったのに一塁に懸命にうさぎ跳びで向かえばアウトは必然だろう。繰り返した訓練の意味と実践との区別がついていなければこんな笑い話のような事も起きかねないが、演技の場では決して珍しくない現象なのだ。 

 

「一生懸命なのは分かるけど、そこはうさぎ跳びじゃなくて普通に走って良いですよ。」と指導をすることがどれほど多いことか…

 

リアリズム演技への思い込みと混乱、そこからの解放の軌跡

 

このシリーズは、これまでに何かしらのリアリズム演技メソッドを学びはしたが、十分には使いこなせていないと実感されている俳優さんを対象にしている。

 

「みん☆スタ」の受講生で演技歴10年のある女優さんが綴ってくれた24週分の「気づき」の投稿を公開する許可を頂いた。

 

なぜなら、その一連の気づきを読むと真摯に演技に取り組んでおられるにも関わらずリアリズム演技訓練から派生した混乱がいかに彼女を不自由にして来たかを垣間見れるからだ。

そして、スタニスラフスキー・システムへの理解が深まるにつれ、その混乱した思い込みの存在に気づき、解放されてゆく軌跡を辿っていける。

同じ混乱や思い込みを無意識に抱えている俳優は少なくないだろう。この投稿から解放につながる気づきが得られる俳優は大勢居るはずと期待できるからだ。

 

合わせて毎週の投稿への私のフィードバックも公開しスタニスラフスキー・システムを理解するための小さな演技レッスンもご紹介したいと思う。

あなたの習得したメソッドがなんであれその知識や価値をより実践に活かすためのヒントになればと構想している。

 

前置きが随分長くなってしまったが、以降、

 

  1. 女優Aさんの気づき
  2. アクティングコーチ田中てつのフィードバック
  3. 気づきを深めてもらうためのミニレッスン
  4. 該当の「みん☆スタ」のレッスン内容の概要紹介

 

という構成で今後も進めて行こうと思う。

 

「みん☆スタ」第一週はゴールを明らかにするレッスンから始まる。 

 


女優Aさん(演技歴10年)1週目-1のレッスンへの気づき

「明確じゃなかったのだと気付きました。」

 

私達がこれから目指す演技とはどんな演技であるのかについて全てに納得がいきました。「生きている限りは交換作業をしている」という言葉にはハッとさせられました。

 私の俳優としての志はまさに「元気や勇気をあげたい!」なのですが、田中さんが具体例を仰った時、より明確になりました。

「ゴールで何を体験したいのか?」もそうですが「理想とする演技」に対しても、いま一歩明確じゃなかったのだと気付きました。

今日のワークで明確になったので、自分の最高の瞬間を毎日体験しようと思います。

 

アクティングコーチ田中てつから

「私達は自分の目的地さえ分かっていない事が多いですね。ましてや役の人物の目的をや…です!」

 

ゴールが不明瞭であること、分かったつもりになっている事が私達の成長を邪魔している事さえあります。ですので、今日の気づきは非常に貴重だと思います。

 

今回のレッスンで経験して頂いた「ゴール(目的)を明確にする技術」は実は俳優が演技をする際に最も重要な技術と言っても過言ではありません。今後その事を益々実感されてゆくかと思います。

 

つまり、「役の人物を知る」とは「その人物の行動の目的を知る」と同義なので、俳優が一生かかって磨いていくべき大切な能力ですが、その目的を文字通り「考えて」終わりにしてしまう人が実に多いのです。

本当に「知る」とは今回のように「五感で経験して」初めてその真の意味が捉えられるのだと肝に銘じていきましょう。

 

自分の目的でさえつい分かったつもりになってしまうものではないでしょうか?そして、歪んだ認知と間違った行動の結果、自分が信じていた目的とは全く違う目的の為に行動していたのだと後になって思い知り愕然とすることも多いかと思います。

 

  • 「家族の為」と言いつつ家族と疎遠になってしまう仕事人間
  • 「あなたの将来の為」と言いつつ子供をダメにしてしまう親
  • 「~の為」と思い込みタバコがやめられない人

 

あるいは、自分の目的が分からない事もあるでしょう。

 

  • なぜ、あんなことを言ってしまったのか?
  • なぜ、あんな反応しか出来なかったのか?
  • なぜ、今ここに居るのか?

 

私達は自分の本当の目的を知らないことさえあるのです、ましてや役の人物をやです。

 だからこそ、目的は頭で考えるのではなく、この行動の先にあるゴールに到達した時に経験するであろう五感を伴ったイメージの中で体験してみる必要があるのです。

すると、分かっていたつもりだったものが、本当にその目的を知ったと感じられるようになるのです。

 

今回のレッスンでなぜ自分が俳優になったのかがより明確になったかと思います。と同時にモチベーションも高まったのを感じて頂けたかと思います。

役作りで言うと、この動機が高まるという部分が役との共感につながり、共感があるからこそ俳優が役を演じるのではなく役の目的を達成するためにアクションしたくなり、結果、有機的に役に生れ変るというプロセスが始まります。

 

 役になりきる演技に直結した分析とは役の目的を知るために「考える」のではなく「感じる」必要があります。そうでなければ演技の役に立つ行動分析ができたとは言えません。

 

多くの俳優が役の目的を知り共感することが役になりきるために非常に重要な要素だと知識として分かっているにも関わらず、実演に活かしきれずにいる理由はここにあると思われます。

 

結果、目的設定は次第に形骸化し「一応、目的は設定しました」という程度になっていたりするのです。

 

繰り返しますが、目的は「考えついて」終わりなのではなく、その目的を達成したら味わうであろう感覚を「身体で感じられるくらいに明確にし経験して」初めて「知った」ことになります。

 

 

「明確にする」とは「身体感覚を伴うほど具体的にすること」だと覚えておいてください。

 

慣れてくれば「考える」のではなく、「感じる」方が、役の分析が楽しいですし、正確に分析できるようになります。

 

 


ミニレッスン

 

では、目的を具体的にして身体感覚で味わえるほど「感じる」とはどういうことか?どうすればそのような能力や感覚を磨いていけるのかを動画で詳しく解説しましたので是非観て下さい。(22分30秒)

 

 

 

 

以下「みん☆スタ」の該当レッスン概要です。ご参考までに

「みん☆スタ」1週目-1 俳優に欠かせないゴールを明確にする技術!

  

 

レッスンの目的

 

演技に限らず何か新しい事を学び始めるその前に、どうしても明らかにしておかなければならない事がある。それは私達が目指しているのはどこか?を明確にするという作業だ。賢明に努力と経験を重ねてやっとゴールとおぼしき場所にに辿り着いたのにも関わらず。

 

「こんなところに来るつもりは無かったのに…」と

 

そこから見える景色に愕然としているベテラン俳優は実は少なくないからだ…。半年間のレッスンを始めるにあたって先ずは以下のレッスンに取り組んでいる。

 

1週目ー1の主なレッスン内容

 

  • 俳優の演技力向上に役立つヴィジュアライゼーションの秘訣を紹介。
  • アクティングコーチの誘導でイメージの世界を五感で体験する。
  • イメージで体験した理想とする演技を明確に言語化して定義する。

 

さて、ここまでの訓練は「みん☆スタ」で最初の週に取り上げるレッスンとレクチャーです。リアリズム演技の非常に重要な部分となっていますので、継続的にシステマティックに学びたい方は先ずは2週間無料で「みん☆スタ」を体験してみてください。格安で世界最高峰のレッスンを経験できますので。